話しながら仁科さんも同じようにコーヒーを飲む。
すると湯気でメガネが少しくもってしまったのだろう。彼は一度カップを置き、メガネを外してレンズを拭いた。
以前仁科さんがケガをした時にも少しだけ見たけど……メガネ外すとまたちょっと印象が違うなぁ。
いつもほど厳しく見えないというか、顔立ちの綺麗さが目立つというか……。
ついまじまじとその顔を眺めると、その視線に気づいたように仁科さんはこちらを見た。
「なんだ?よく見て」
「え!?あっ、いえ、えーと、メガネないと意外と若く見えるなって!」
「……意外?」
はっ!失礼だったかも!
綺麗だと思って、とは言えずつい慌てて誤魔化したはいいけれど、『意外』の言葉にその目はジロリとこちらを向いた。
その視線に、やや強引に話題を逸らす。
「あっ、そういえば仁科さんってどれくらい視力悪いんですか?」
「どれくらい、と言われると……そうだな」
仁科さんはそう例えを探すように考えながら、辺りをキョロ、と見る。
そしてふと思いついたようにずいっと顔を近づけた。
「これくらい近づけば、千川の顔がしっかり見える」
突然近づく数センチの距離。いつもメガネ越しに見ている目にまっすぐに見つめられ、心臓はドキッと跳ねた。
なっ……!
動揺を表すかのように、私の頬はボッと赤くなってしまう。