「これ、どうぞ。お腹や背中に貼っておくとかなり違いますよ」
「いいのか?悪いな」
はい、と笑って頷く私に、仁科さんはそれを受け取ると小さく笑みを見せる。
その顔にはもうすでに腫れた痕はなく、いつも通りの綺麗な輪郭だ。
あれから仁科さんの頬の腫れは数日でおさまり、梅田さんを送り届けることもなくなった。
梅田さんの一件でお店の空気が気まずくなったらどうしよう、とも思ったけれど……。
「おはようございまーす」
ちょうどやってきた梅田さんは、襟にファーがついた薄ピンク色のコートという暖かそうな身なりで室内へ入ってくる。
「あ、梅田さんおはよう。今日寒いね」
「ほんと、超寒かったんで今日は彼氏に車で送ってもらっちゃいましたぁ」
口をとがらせて言いながらも出てくるのは、新しい恋人がいるという話。
そう、梅田さんは仁科さんが完全に無理だと分かると否や、即新しい恋人を見つけたのだそう。
『悔しいけど、あんなデリカシーのない男に割く時間はないんですよねぇ』
……なんて、アグレッシブすぎて尊敬するくらいだ。
苦笑いを浮かべると、今日も仕事に励むべく私はスタッフルームをあとにした。