「あそこで覚えてるって言ったら、嫌なこと思い出させるかもしんねぇなって」


「大丈夫だよ。ありがとう。それに、この話をし始めたのあたしだよ?」


「あー、だよな」


「そうそう」


そう言って微笑むと、日向くんも納得したようにうなずいた。


「ごちそう様でした」


パチンっと両手を合わせてから、日向くんにもう一度お礼を言う。


「すごいおいしかった。ありがとね」


「奥山の腹が満たされたならよかった」


「なんかその言い方、嫌だなぁ。すごい食い意地張ってるみたい」


「バーカ。べつに変な意味じゃねーし」


日向くんにつられてあたしも微笑む。


おだやかで心地のいい時間が過ぎる。


「あたし、屋上に来たの初めてだよ」


ゆっくりと立ちあがって、ぱんぱんっとスカートについた汚れを落とす。