「もう、ダメかもしれない。」
何でそんな事を言うんだよ。
あなたが居なくなれば、僕の生きる意味がなくなる。
「母さん、大丈夫。大丈夫だよ。」
笑顔を作るのは得意な方だと思う。
泣いたら、あなたは悲しむだろう。
泣いている心を隠し、笑顔を貼り付ける。
そしたら、悲しそうに泣いた……
「ごめんね。」
「どうして謝るのさ。」
戸惑う僕に手を伸ばし、頬へ触れた。
「…ごめんね。」
あまりにも悲しい顔をするから……貼り付けた笑顔が剥がれ、泣いている心が姿を現わす。
「泣きたい時は、泣いていいのよ。私はあんたのお母さんなんだから。家族の前でくらい、無理せず自然体でいなさい。」
魔法でもかけられたかのように涙が止まらなかった。
久しぶりに人の温もりを感じた。
それは、僕には勿体無いほど温かくて…。
「ごめんね。私がこんなんだから、いつも無理させて、嘘まで吐かせて…。」
「母さんの所為じゃない。僕が弱いからっ…。」
まるで自分を責めているかの様な言い方…。
僕が悪いのに。
お願いだから、謝らないでくれ。
母さんは首を横に振った。
「助けてやれなくてごめんね。」
病室の窓の外を一羽の鳥が通り過ぎていった。