【松坂君の胸中】

~side遼太郎~


あのやばそうな奴らが近づいてきたのに気づいた時から
まずい、と思い始めた。
仲つつまじいカップルが歩いていれば
男の方から徹底的に金をもぎ取ったりと、
あまりにも残酷な仕打ちをしてくるらしい。
やはり悪魔と呼ばれるだけある。

俺は大変幸せだった。
タイミングを計らい、偶然を装って極自然に一緒に
帰ることに成功した。
それにしれっと俺の気持ちを伝えようなんて、
考えていたし、いい雰囲気で話も進んでいた。

案の定絡んできた奴等に俺は少なからず苛ついた。
勿論俺の幸せな時間をぶち壊したこと、
さらには慧さんを男と間違えたことだ。

慧さんは確かに普通の女子とはかなり違う。
背も高い、足は長い、体は細い、髪は短いというような、
中性的な雰囲気を醸し出している。
けれど、顔は整っているし、その辺の女子みたいな
汚い言葉や訳の分からない言葉は使わない。
慧さんの優しさは決して見返りを求めていたり、
媚を売るような紛い物でもない。

そんな素敵な彼女を男と勘違いするなんていうことは、
見る目がないにも程がある。
不良達の訳のわからぬ挑発を丁重に断りながら
慧さんに被害が及ばぬよう、手を掴み引き寄せた、
我ながらやってしまったと思いつつ、
そんなことを悶々と考えていると、不良の怒声が
聞こえ、慧さんに拳が飛んでいく。
それを目の端にとらえた瞬間、俺の怒りの
ボルテージは爆発した気がした。