黒瀬の家にお世話になってから2ヶ月半が過ぎた。

「莉子〜クリスマスはやっぱりマコトくんとデート?」
優子がニヤニヤしながらそう聞いてくる。

明後日から冬休みが始まる。

「んー、マコトくん、なんかクリスマスはバイト入ってるみたいで、無理そう。でも、翌日は休みだから一緒に過ごそうって」

「へー。順調そうね」

「うん!この間なんかね…!」

「はいはーい、惚気は聞き飽きました〜」

私はマコトくんと順調で、きっと幸せなんだと思うけど。

気になるやつが一人。

私は教室の端で本を読む、黒瀬 葵を見る。


彼を笑顔にしてみせます。と麻友さんに宣言したのはいいんだけど…。

黒瀬が笑顔になることってそもそも何?

好きな食べ物とか好きなこととか何も知らないし。


っていうか、一緒に住んで2ヶ月半だっていうのに、私は黒瀬のこと何も知らない。

まぁ、知ろうとしてなかったし、そもそも嫌いだったんだけど。


「…子!莉子!」

「へ!あ、なに?」

ユキに名前を呼ばれハッとする。

「冬休み、また3人で集まろうよ!」

「あ、うん。だね!」

「優子が見たいって言ってた映画、観に行こうよ!」

「それいいね!」

2人が楽しそうにそう話す。


黒瀬はどんな映画観るんだろう…。