「颯がこの町で、生きてたこと。笑ってたこと。その証を、描きたいの」
そのとき初めて、私は真正面からまっすぐに、颯の目を見た。
今まで私は、彼に対して後ろめたい気持ちばかりで、目をそらしたいばかりで。
初めて私から、私の意志で、彼と目を合わせた。思いが伝わるようにと、願いを込めて。
「………………」
颯はしばらく呆然としていた。絵を持ったまま、ただただ私を見上げていた。
そして、次に彼の口から出てきたのは、肯定でも否定でもない言葉だった。
「……………俺、駄菓子屋に行きたい」
ぽつりと呟かれた、希望。
私は一瞬、なんのことを言っているのかと考え、けれどすぐに気がついた。
「………私の、近所の?」
去年の展覧会で描いた、あの駄菓子屋?
颯はゆっくりとうなずいた。すると、じわじわと彼の瞳に涙がにじんでいく。
ぎょっとした私の視線から逃れるように、颯は袖でごしごしと涙をぬぐった。
……それは、悲しいから泣いているわけではないと、思ってもいいだろうか。