「………………」
私の大事なもの。
家族、友達。絵でいえば、なんだろう。
誰かの心に残るような、作品をつくりたい。だからそのために努力すること。技術を上げて、説得力を出すこと。
それだけじゃ、ダメだろうか。
私は何かを見失ってる?
ああでもそうか、だから私は今、筆を持てなくなっているのか。
私が大切にしてることって、なんだろう。
考え込んだ私を見て、颯がもう一度私の頭を撫でた。今度は乱暴じゃない、やさしい手つきだった。
「俺はさ、理央が描く世界が好きだよ」
彼の手が離れる。その足はもう一度、海の方へ歩いていった。