私がムッとした顔をすると、颯は相変わらず笑いながら、「でもさあ」と言った。
「みんな、そうだと思うよ。自分が生きてる場所が世界の中心だよ。他の人のために生まれてきたんじゃないんだから」
理央もそうでしょ、と言われた。
いや、そうかもしれないけど……だからって、自分を中心に世界が回ってるとは思っていない。
不本意で、頷かずに眉を寄せて見せると、彼はふと笑みをやわらげて、おだやかな顔をした。
「理央は、他の人の絵のために、絵を描いてるわけじゃないでしょ」
彼の言葉に、私は小さく目を見開いた。
………それは、そうだよ。
私の絵は、他の人の絵を目立たせるために、存在してるんじゃない。
私が表現したいもののために、存在している。