「………うん」
好きだ。
だから、嫌いになりたくない。
できるならずっと、好きなものを好きなだけ、描き続けていたい。
颯は少しの間、そのまま黙っていた。
膝にうつ伏せていると、また涙が出てきた。今度はこらえられなくて、声を押し殺して泣いた。
颯がそれに気づいていたかはわからない。
海のさざなみの音と、近くの木々が風に揺れる音。私が小さく鼻をすする音だけが、私の耳に届いていた。
「………理央さあ、天動説って知ってる?」
突然颯が、さっきよりも明るい声で言った。
顔を上げて、わずかに涙の残った目で見上げる。
颯は目を細めて、ニッと笑っていた。
「………知ってるけど………でも間違ってたんでしょ、それ」
天動説は、地球を中心に他の銀河系の星が回っているという説だ。
だけどそれは結局間違いで、正しいのは太陽を中心に地球を含めた銀河系が回っているという、地動説だ。