私はその場に立ち尽くした。
たくさんの人が会場を行き交う中で、私はひとり、『推賞』と書かれた絵を前に、圧倒されていた。
「どうやったって、すごい才能の前には勝てない。私は今まで、ぜんぶ努力で技術を手に入れてきたけど、それだけじゃダメなんだって言われたら、もうどうしていいかわからない」
私には才能なんかない。私自身にも、私の絵にも、人の心を動かせるだけの力がない。
「展覧会に飾られてる自分の絵を見て、なんか悲しくなった。虚しくなった。私の絵なんか、そういう『才能』を際立たせるためのギャラリーのひとつでしかないんだって思ったら、自分の手が、信じられなくなった」
ほんの一握りの、本物の才能が世界を動かす。
そして私は、それを際立たせるための、数あるうちのひとつでしかなかった。
世界を構成する、小さな小さな歯車。ひっそりと、ゆっくりと、誰の心に残ることもないまま、死んでいく。
誰の目にも止まらなかった、私の絵のように。