「私の絵の前に立ち止まってくれる人なんか、いなかったんだ」



たくさんの人が、私の絵の前を通りすぎていく。目線は一瞥くれただけで、すぐにそらされる。


その様子を遠くから見つめて、愕然とした。



「私の両隣に飾られてあった絵は、大胆で力強くて……私の絵が、すごく霞んで見えた。全然目立ってなかった。たくさんの作品の中で、私の絵は地味で、完全に埋もれてた」



颯は何も言わない。


きっと、何を言えばいいのかわからないんだろう。


………何も言わなくていいよ。


私だって、今どんな言葉をかけてほしいかなんて、わからない。