「顧問に作品を提出する日の、ギリギリまで描いてた。手を止めたとき、出来たって思った。今まで描いた中で、いちばんの出来だって」



賞をとれるだなんて、自惚れていたわけではない。けれど、ほどほどに自信があった。


中学の頃、私はそれなりに賞をとっていた。大きな大会でも賞をもらっていた。


高校一年生の私の実力は、この舞台でどれほど通用するのだろう。それを知るのが楽しみだった。



「それでいざ展覧会に行って、他の人の作品と一緒に飾られてる自分の絵を見たんだ」



技術の面では、他の人に負けてない。そういう自信をもって、会場へ足を踏み出す。


自分の絵があるところを探して歩いて、そうして私が見たもの。


…………私の目に、映った光景。




「誰の足も、止まらなかった」




藍色の海に浮かぶ月を見つめながら、ポツリと呟く。


颯はハッとした顔をして、こちらを向いた。ぐ、と喉の奥がつまって、痛くなった。