自分の作風は好きだ。納得はしている。

でも………。



「人に、認めてもらえない。今の私の絵じゃ、ダメなんだって言われた。だから、今の私の絵は、好きじゃない」



私の淡々とした言葉に、颯は静かに目を伏せた。



「………話、聞きたいんだけど。……聞いてもいい?」



海の水が、寄せては引いていく。


彼があんまりつらそうな顔をして言うから、なんだかまた笑いそうになった。


「いいよ」と、平坦な声で言った。



「大した話じゃないよ。どこにでもあるような、悲劇でもなんでもない出来事」



それでも私の心に居座り続けて、消えてくれない出来事。


誰かに話すのは初めてかもしれない。


颯の横に腰を下ろす。

そうして私は、口を開いた。