普段は、私とは違うところにある身体。遠くから見ていることしかできない背中。
伝わる彼の体温にちょっとどきどきして、どうしてか切なくなった。
きっと明日には、触れることもできなくなる。
当たり前だ。
世界のまんなかにいる彼と、隅っこにいる私。
私たちが今一緒にいること自体、おかしな状態なんだから。
*
「…………えっ、ここ?」
驚くことに、たどり着いたのは私の地元の海岸だった。
午後七時すぎ。もう辺りは真っ暗で、静かなさざ波の音だけが辺りに響いている。
橋倉くんは適当なところに自転車を置くと、ほら言っただろうと言わんばかりの顔で「中野さんも知ってるところでしょ」と言った。
「いや、そりゃ知ってるけど……でも」
どうしてわざわざ、こんな遠いところまで?
海に来たかったのなら、高校から近いところでよかったのではないか。