普段は、私とは違うところにある身体。遠くから見ていることしかできない背中。



伝わる彼の体温にちょっとどきどきして、どうしてか切なくなった。

きっと明日には、触れることもできなくなる。


当たり前だ。



世界のまんなかにいる彼と、隅っこにいる私。



私たちが今一緒にいること自体、おかしな状態なんだから。








「…………えっ、ここ?」



驚くことに、たどり着いたのは私の地元の海岸だった。


午後七時すぎ。もう辺りは真っ暗で、静かなさざ波の音だけが辺りに響いている。


橋倉くんは適当なところに自転車を置くと、ほら言っただろうと言わんばかりの顔で「中野さんも知ってるところでしょ」と言った。



「いや、そりゃ知ってるけど……でも」



どうしてわざわざ、こんな遠いところまで?

海に来たかったのなら、高校から近いところでよかったのではないか。