「………わかった」



ふたり乗りなんて初めてだ。

ぎこちなく荷台に横座りする。前に座っている橋倉くんは私を見て、面白そうに笑っていた。


「………なんで笑うの」

「はは。ごめん、なんでもない。じゃあ行こっかー」


辺りはもう薄暗い午後六時、私たちは学校を出発した。







橋倉くんの自転車は、迷いなく進んでいった。


近くの海岸へは行かず、そのまま横の方向へ走っていく。橋倉くんの腰に手を回して、夕方の街の様子を眺めた。


二人乗りはやっぱり目立つのか、私達は道行く人の視線を集めていて、時折すれ違いざまに人と目が合うと、慌ててそらしたりした。


橋倉くんの、まっくろい学ランの背中。

うしろに出した薄い生地のフード、風に揺れる柔らかそうな黒髪。



それを、こんなに近くで見ているのが不思議だった。



どうして私は今、橋倉くんの自転車に乗って、海なんて目指しているのだろう。