私が困惑した顔をすると、橋倉くんはガタッと席を立った。机に手をついて、座っている私の顔をのぞきこむ。
綺麗な目に、私が映っていた。
「中野さんと行きたいんだよ」
……彼の言っていることが、うまく理解できない。
どうして私?
私は橋倉くんに、そこまで言わせるほどのことをしただろうか。
絵のことを含めても、彼にこんなに気に入ってもらえるほど、私達の間には何かあったわけではないはずだ。
「…………………」
だけど橋倉くんの瞳はどこまでもまっすぐで、私はその視線から逃げられなくて。
「………いい、けど…………」
喉の奥がつまった。
絞り出すように出した声は、少し掠れていた。
……いずれにしろ、断る理由がなかったんだ。
私の手はもう、これ以上筆を持つことを拒否していた。