「わかんないって……連絡とかは?」
「連絡取り合うのは、重要な話を伝えなきゃいけないときくらい。幽霊部員ばかりだから、いちいち欠席連絡してたらキリないでしょ。顧問も滅多に来ないから、私と先輩は自由に来たり帰ったりしてる」
「なるほどね」
だから、先輩が部活に来なくても私はあまり気にしない。
先輩はもう三年生だし、受験なんかで忙しくなる時期だ。逆も然り。
長机と長机の間にある椅子を退けて、そこにイーゼルを立てる。
適当な紙を置いて、何を描こうか考え始めた。
………正直、今は風景を描きたくなかった。
きっと今風景を描いたって、上手くいかない。気分転換をしよう。
私の風景画を気に入って来てくれた橋倉くんには申し訳ないけれど、今の私に、廊下に飾ってあるあの絵のようなものを描ける自信は、全くなかった。