「そっか」



なら、私だって悪魔に魂を売ろう。それでおあいこだ。


私はもう一度目尻の涙を拭って、前を向いた。


どんなに悔しくても、どんなに悲しくても、それでも前を向こうと頑張ることを教えてくれたのは、颯だった。




ひとりで勝手に決めて、いなくなるなんてひどいと思う。


私の記憶を残したままなんて、いちばん残酷だ。



だから、このままになんかしてやらない。



君を描いた絵を抱きしめて、ひとりで生きてなんかいかないよ。


颯はそろそろ、自覚すべきだ。


自分が誰かの世界のまんなかにいること。自分がいなきゃ、回らない世界があること。



私はしっかりと妖精を見据えて、机の上に片手をトン、と置いた。




「ここにある絵、ぜんぶあげる」




妖精は私の言葉に、目を見開いた。


颯が描かれた、ぜんぶで八枚ある絵たち。今、唯一彼がいた跡を残すもの。



「だから、颯と話をさせて」



妖精は、幼い頃の颯の顔で、面食らった表情を浮かべた。