「よかった………」
安心したら、涙がぼろぼろこぼれた。
夢なんかじゃない。幻でもない。
颯はちゃんとここにいた。私の隣で笑っていた。ここで私と同じ高校二年生として、生きていた。
嘘じゃない。消えてない。
ぜんぶ本当だ。
ねえ、颯。
今、何してるの。何考えてるの。
『もう終わり』なんて勝手にひとりで決めて、満足して、諦めて。
やっぱり颯は自己中心的で、周りが見えてない。自分さえ良ければいいと思ってるでしょう。
『俺のことほんとに大事にしてくれてる奴もいるんだなってわかって、もっと自分以外の世界も大事にしようって思った』
全然わかってないじゃん、颯。
ちゃんと見てよ、君の大事なもの。君を大事にしてるひと。
私は納得してないよ。
これで終わらせるなんて冗談じゃない。
すべてを夢にしたかったなら、すればよかったんだ。
この絵も、私の記憶も。すべて消してしまえばよかった。
だけど君は残した。
それは、覚えていてほしかったからでしょう?
私に。この世界に。君がいたこと。君が笑っていたこと。
……こんなちっぽけな世界の片隅にでも、残しておきたかったってことでしょう。