「…………っ」
颯のクラスの教室へ入って、教卓に入っていたクラス名簿を見た。
教室にいた人たちはただならぬ様子の私を、不審そうに見ている。
だけどそんなこと、気にしている余裕はなかった。
橋倉。はしくらそう。
名簿を上からなぞって、一字も見逃さずに読んでいく。
『野口』という苗字が見えたとき、ドキリとした。
その下は………。
「………ない………」
『福田翔一』、と書かれていた。
ない。
『橋倉』が、どこを探しても見つからない。
くるしくて、息をするのもくるしくて、自分のクラスに駆け込んだ。
自分の席についてクラスメイトと話していた眞子に気づいて、大声で呼ぶ。
「眞子!」
「あ、理央ちゃん。おはよう」
「そっ、颯!橋倉颯、知ってる?知ってるよね!?」
木の下で出会うまで、颯とは初対面も同然だった私に、彼のことを色々と語ってくれたのは眞子だ。
だけど眞子は、さっきの男子のように、戸惑った表情をした。