そうして夏休みが終わって、おじいちゃんが退院して、学校が始まって。
私は放課後に病院へ行くようになったけれど、やっぱりどうしても行けない日が出てきた。
私はもっと風景を描くのを上手くなりたいと思って、そのうち美術部に入部した。
少しずつ病院へ行く足が遠退いて、だけど私の中から颯の存在が消えることはなくて。
中学一年の冬、ようやく久しぶりに病院へ行けると思ったら、颯は病院を出ていた。
私は受付で知り合いの看護師と向き合い、呆然としていた。
『……え、退院したってことですか?』
『ううん……退院というか、転院ね。こんな街のど真ん中にある病院より、もっと空気の綺麗な山の方にある病院に移ったのよ』
颯は静養のために病院を移っていた。
そこはこの街から遠く、中学生の足で気軽に行けるような場所ではなかった。
聞いてない。
そんなの聞いてないよ、颯。
私は悲しくなって、手紙を書いた。
看護師に病院の住所を聞いて、颯宛に手紙を送った。
一週間ほどで返事の手紙は届いた。
それから私と颯は、ゆったりとしたペースで文通を始めた。