ハッとして振り返ると、そこには自分と同じくらいの年齢の男の子が、ベッドの上でこちらを見ていて。
彼ははつらつとした笑顔で、私に話しかけてきた。
『なあ、暇なら話そうよ』って。
橋倉颯と名乗ったその少年は、私から色んな話を聞きたがった。
家族のこと、学校のこと、この街のこと。
彼は小さい頃から身体が弱くて、ずっと入院しているらしかった。
学校に通ったこともほとんどなく、普段外に出ても病院の庭くらい。
病院で同年代の子供と触れあうことが少ないらしく、隣のベッドの近くで暇そうに座っている私を見つけて、声をかけたんだそうだ。
日常のなんでもない話も、颯は楽しそうに笑って聞いてくれた。
白い肌も、細い指も、華奢な身体も、彼の体調があまり良くないことを表していたけれど、それを忘れさせるくらいに彼の性格は明るかった。
私は普段からたくさん喋る性格ではなかったし、どちらかといえば引っ込み思案だった。
だけど颯はそんな私にも積極的に話しかけてくれて、彼との会話は楽しかった。
出会って最初の日は、世間話をして夕暮れには家族と一緒に帰った。
だけど私は彼のことが気になって仕方がなくて、次の日、また病院へ行った。
わざわざ会いに来た私に颯は驚いていたけれど、すぐに嬉しそうに笑った。