二ページ目は、水彩絵の具で塗られた河川敷。


この前の夜、颯と行った場所。


三ページ目は、この近くの図書館。


四ページ目は、市民公園。


五ページ目は、私が通っていた中学校。


今の私よりずっと下手で、だけどどこか懐かしい風景たち。


動悸は激しくなり、ガンガンと痛む頭はもうまともに動いていなかったけれど、それでも私は次のページをめくった。


六ページ目に描かれていたのは、花瓶に生けられた花だった。


窓際に置かれた、青い花。


そしてその右下に書かれていた文字を見て、私は息を飲んだ。




『颯へ』。




………誰だ。


これを書いたのは、いつの私だ。


私の知り合いに、『颯』という名前の人はひとりしかいない。


だけどこれは私の字だ。今より少し下手で歪んでいるけれど、できるだけ丁寧に書こうと心がけていたのがわかる。


このスケッチブックは、間違いなく過去の私のものだ。



頭が痛い。何かを思い出しそうで、思い出せない。


蓋がパキパキとこじ開けられる音がする。


ドクンドクンと脈打つ心臓の音が、耳奥で強く響く。