「………………」

「……これじゃ、理央の絵に心動かされたことにはならない?」

「………なる………」


私の絵を見て、『ここに来たい』と思ってもらうこと。


こんなにも綺麗な風景のある場所へ、こんなにも暖かい人々がいる場所へ、『来たい』と思ってもらうこと。



私がずっと、絵を通して伝えたかったこと。



『何を伝えたいのか、見た人にどう思ってほしいのか』



………ああ、これか。


今度は理由もわからないまま、涙がこぼれた。


大事な何かを思い出したような、欠けていた何かをやっと見つけたような、そんな感覚がした。


どうして忘れていたんだろう。


こんなにも大切にしていた想いを、どうして忘れられたんだろう。



世界を動かす大きな歯車の動きにばかり気をとられて、私の世界の大切な歯車が回っていなかった。


どうしてかわからない。


まただ。自分のことなのに、全然わからない。


激情があふれる混乱のまま、私は口を開いた。


やっと探り当てて掴んだ綱を手繰り寄せるように、自分の想いを口にした。