「………………」
そっと絵に触れた。これが会場で展示されているのを想像する。
………ああ。
「うれしく、ない」
じわりと瞳に涙がにじんだ。歪んだ視界の中で、颯が悲しそうに眉を寄せているのが見えた。
こんなの私の絵じゃない。
私が描きたかったものじゃない。
今までたくさん努力してきたのに、結局私はこんなものしか描けないのか。
悔しくて悔しくて、涙が出た。
『才能』に負けたくない。
私の作品は、努力は、他の人の絵を目立たせるためにあるものじゃない。
そう信じたいけれど、人は私の絵を見て、心を動かしてはくれなかった。
だからこんなにもがいているのに。
泣きじゃくる私の頭を、ふと暖かい何かが触れた。それは普段は冷たいはずの、颯の手のひらだった。