身体が震える。その視線から逃げたくなって、だけど彼は逃がしてくれなくて。
楽しい?
この絵を、描いていて?
「………………」
ぐちゃぐちゃの絵を見つめて、考える。
絵を描いていて、楽しいと心から思えるのは、颯を描いているとき。
自己満足のそれは、けれど目の前の絵より、ずっと完成されていると思った。
颯がここで生きたこと、笑ったこと。
それを残すために描いたものだ。
………今描いているこれは、ただひたすら、人の評価ばかりを気にして描いたもの。
「俺には、理央がそれを楽しんで描いてるようには見えなかったよ」
「………楽しいだけじゃ、賞はとれないよ」
「うん。でももしその絵が賞をとったとして、理央は嬉しい?」
「………そん、なの」
嬉しいに、決まってる。
そう思って、本当に?と自分に問いかけた。
本当に嬉しいだろうか、私。
この絵が人に評価されて、賞をとったとして、それを私は誇れるだろうか。
自信に、できる?