白を基調としたこの美術室を、私は何色で表現しよう。


青?橙?


落ち着いた雰囲気にするなら、青だ。暖かい雰囲気にするなら、橙。


迷う中で、昨日の先輩の言葉がよみがえった。



『何を伝えたいのか、見た人にどう思ってほしいのか』



「………………」


絵の具を持つ手が、止まる。


私は、この美術室が好きだ。いつだって変わらず、静かに私を受け入れてくれる、この空間が好きだ。


私はこの絵を見た人に、どう思ってほしいんだろう。


私のように大切に思ってほしい?


それは無理だ。部員である私だからこそ、大切に思えるのだから。


わからない。


わからないです、先輩。



くるしくて、だけど負けたくなくて、手を止めたくなくて。


ひとまずこの空間の落ち着いた静かさを表現しようと思い、青を筆にとった。



私の目に映る美術室に、色づけていく。


塗りながら、どんどん迷いが生まれていく。


色はこれでいいのか?

順番は合っている?


塗り方は?雰囲気は?


本当にこれで、この空間の良さは伝わるのだろうか。


色の濃さは、これくらいで良い?