「何を伝えたいのか、見た人にどう思ってほしいのか。それさえハッキリすれば、描き方だって決まってくると思うよ」
「………………」
先輩の言葉が、頭の中をぐるぐると回る。
呆然とする私を見て、先輩は「でもあんまり考えすぎないでね」と笑った。
………何を伝えたいのか。
見た人に、どう思ってほしいのか。
私が一言「答えてくださってありがとうございました」と言うと、先輩は苦笑いしながら作業に戻った。
席について、言われたことを考えてみる。すると何故か、唐突に颯の顔が頭をよぎった。
まるで、閉じられた蓋をこじ開けるように。
考えれば考えるほど、チリッと頭の奥が痛んだ。
*
「あれ、今日はひとり?」
翌日の放課後、颯が美術室にやってきた。
席について、イーゼルと向かい合っていた私と目が合う。
「……うん。先輩は来てないよ」
「そっか」
颯は残念そうに言って、机に荷物を置いた。
はじめこそ緊張していたけど、今では彼はすっかり先輩と打ち解けている。