「何を伝えたいのか、見た人にどう思ってほしいのか。それさえハッキリすれば、描き方だって決まってくると思うよ」

「………………」


先輩の言葉が、頭の中をぐるぐると回る。


呆然とする私を見て、先輩は「でもあんまり考えすぎないでね」と笑った。



………何を伝えたいのか。


見た人に、どう思ってほしいのか。



私が一言「答えてくださってありがとうございました」と言うと、先輩は苦笑いしながら作業に戻った。


席について、言われたことを考えてみる。すると何故か、唐突に颯の顔が頭をよぎった。



まるで、閉じられた蓋をこじ開けるように。


考えれば考えるほど、チリッと頭の奥が痛んだ。







「あれ、今日はひとり?」



翌日の放課後、颯が美術室にやってきた。


席について、イーゼルと向かい合っていた私と目が合う。


「……うん。先輩は来てないよ」

「そっか」


颯は残念そうに言って、机に荷物を置いた。


はじめこそ緊張していたけど、今では彼はすっかり先輩と打ち解けている。