「………先輩は、他人の評価をあまり気にしない方ですよね」
「そうだね」
「だけど、先輩の絵はしっかり完成されています。賞にこだわらないなら、どうしてそんなにひたむきにやれるんですか?」
失礼な物言いをしてるかもしれない。
だけど知りたかった。ずっとその背中を追いかけてきた後輩として。
先輩は好きなように描いているようでいて、とても上手い。
自己満足で描くと色々な要素がバラバラに散らばってしまいがちだけど、彼の作品はちゃんとまとまっていた。
先輩は、今度こそこちらへ振り返った。
眼鏡の奥の瞳と、目が合う。先輩は優しい顔をして、私を見た。
「僕は、芸術的な『評価』なんかどうでもいいんだ。ただ、伝えたいことを伝えたい。ひとつの作品に、伝えたいことはひとつでいいんだ。それだけを伝えるために、僕は作品をつくってる」
彼のきっぱりした言葉は、いっそ気持ちいいくらいだった。
私のように、迷いがない。そのハッキリした意思に、圧倒された。
「…………………」
評価をどうでもいいと言えるなんて、すごい。
私はそんな風にはなれない。絵の評価がイコール私自身の評価のように思えてしまうからだ。
何も言えなくなった私に、先輩は続けた。