少し膝で弾みをつけて、ぐっと枝に手を伸ばす。だけど触れるだけで、掴むことができない。


やっぱり背が足りない。運動能力も足りない。悔しくて歯噛みしていると、後ろから声がした。



「俺がやる」



えっ………。


驚いて、振り返る。私が何かを言う前に、颯は私の隣まで歩いてきた。


「え、颯、木登りできるの」

「できないよ!けど女子が頑張ってるのに、男の俺が黙って見てるわけにはいかないだろ」


確かに私より背があるし、運動もできるだろう。だけどお世辞にも、颯に並以上の筋力があるとは思えない。


あの高さの枝に登るには、相当腕の力が必要だろう。


だけど颯はやる気だ。


私のように背伸びしなくても、枝に手は届く。だけどそこから、上にいけるのか。