颯はそんな私を見て、面白そうに笑っている。


久しぶりに、なんだか新鮮な気持ちで色を塗った。







クロッキーのあと、なんとなく風景を描いていたら、いつの間にか颯は樹の幹に寄りかかって眠っていた。


この前といい今日といい、私の横で寝過ぎだと思う。人が真面目に絵を描いてるというのに。


仕方がないので、寝ている颯を描くことにした。


眠る彼は、本当にこのまま目を覚まさないんじゃないかと思えてしまうほど穏やかな顔をしていて、怖くなった。


もちろんちゃんと息はしているからそんなはずはないのだけれど、どこか儚い印象があって、私は少し寂しく感じた。


色塗りまで終わる頃には午後三時になっていて、さすがにそろそろ起こそうと思い、彼の肩を叩いた。


「颯、起きて。颯」

「ん………」

「もう三時だよ」

「………えっ」


大きな瞳がばちりと開かれた。彼が眠ったのは一時前だったから、かなり驚いただろう。


「うそ!まじで!早くね!」

「二時間くらい寝てたよ」

「いや、起こしてよ!」

「気持ち良さそうに寝てたし……」

「なんかすげー損した気分だよ!」


起きたら起きたで騒がしいなと思った。


眠くなったらすぐ寝る、子供みたいな颯が悪い。