「理央、バドミントンしよう!」



絵を描く準備をしていたら、目をきらきらと輝かせて言われた。


その両手にはラケットがふたつと、まっしろいシャトルがある。


「……えー、颯ひとりでしなよ。描いてあげるから」

「バドミントンはひとりでするもんじゃねーだろ!理央も絵ばっか描いてると不健康になるぞ!ほら、立って!」


腕を引っ張られて、しぶしぶ立ち上がる。押し付けるようにラケットを持たされた。


こんなところでバドミントンだなんて、何年ぶりだろう。


そういえば小学生の頃、この公園で親とバドミントンしたなあと思い出した。


バドミントンだなんて言っても、ただのシャトルの打ち合いだけれど。



「橋倉颯、いきまーす」



なんだかよくわからないかけ声と共に、颯がラケットを振る。


山なりに飛んできたシャトルを、軽く打ち返した。


「なあ、理央ー」

「なにー」

「平和だなぁー」

「あー、日本に生まれてよかったねー」

「なー」


まったく意味のない会話をしながら、シャトルの打ち合いを続ける。


こちらに向かってくるシャトルを見上げながら、颯の言う通り平和だなあと思った。