「人に見られるって意識したら、構図とか細かいところとか、ちゃんと意識しなきゃって思える。そうすると自然と上手くなるでしょ。……ほら、スポーツも同じだよ。勝つために練習してる人と、楽しむために練習してる人じゃ、上達に差が出る」
当たり前のことだけれど、何事も『その差』だと思う。
人に評価されたいなら、それを意識しないとダメだ。
「いくら楽しんで描いて、それがどんなに上手くても、やっぱり本気でやってる人の絵には敵わないんだよ」
展覧会の会場に行けば、わかる。
本気でやってる人、少しの妥協も許さない人の作品。
このくらいでいいか、と中途半端に諦めた人の作品。
技術はなくても、それでも本気でつくりあげられた作品は、それだけで見る価値があるものだ。
「私の取り柄なんか、絵しかないからさ。これくらいは妥協せずに、本気でやりたいんだ。どんなにみっともなく悩んでも、それでも上手くなることを諦めたくない」
私みたいなひねくれたやつでも、ひとつくらいは誇れるものを持ちたい。
あのとき自分はこんなに頑張ったんだって、将来胸を張って自慢できるくらいに。