「……んーん。忘れるんだよ、みんな、少しずつ。時間が経って、俺がいないことが、みんなの中で普通になっていくんだ」
颯がいないことが、普通になっていく。
そんなこと、あり得るのかな。
この学校のみんなにとって、颯はなくてはならない存在だ。
大事な歯車が動かなくなった世界は、きっと前のようには回らなくなる。
………ああ、だけど。
そうしたら、今度は他の誰かがその歯車を回すんだろうか。
学校社会とはそういうものだ。
その人の代わりはいないけれど、その人の役割を代われる人ならたくさんいる。
それは事実として、確かにあることだ。
いくら『絶対忘れない』なんて綺麗事を言ったって、いなくなった人の存在はどうやったって薄れていく。
悲しい、ことだけれど。
「……誰も悪くない。これは仕方ないことなんだよ」
颯は小さく笑ってそれだけ言うと、また寝転がった。そのまま目を閉じる。それ以上なにかを言う気はないということだろう。
「…………………」
私は作業に戻った。
だけど頭の中では、颯のさっきの言葉が繰り返し流れていた。