私の言葉を聞いて、颯は少しの間黙っていた。


彼にしては珍しく、迷っているような微妙な顔をして、下を向く。


「んー……そりゃ、混ざって遊びたい、けどさ」


だったら、行けばいいのに。


そう言おうとして、だけど私は言えなかった。


彼がまた、寂しそうに目を伏せて、力なく笑っていたからだ。



「………どうせあいつらも、忘れるんだよ。俺のこと」



………驚いた。


彼が、そんなことを言うと思っていなかったからだ。


『どうせ』なんて。

この人には似合わない言葉だと、思っていたから。



「………そんなこと、ないよ」



忘れないよ。きっと、誰も。


この学校で、颯が今まで築いてきた人間関係は、転校なんかで消えたりしない。


だってあんなにも、愛されているのに。


みんなの中心で笑い、周りの人を笑顔して、生きてきたのに。



だけど颯の表情は晴れない。黙って首を振るだけだ。