「………なんとかなるかな」
「おー、なるなる。絶対なる」
根拠もなく頷く颯を見て、思わず笑った。
本当かなぁ、と言って、小さく肩を震わせる。
空の茜色が辺りに広がり、私たちの後ろには真っ黒い影が伸びていた。
*
次の日の放課後、美術室へ行くと、誰もいなかった。
今日は、古田先輩は来ない日なのかな。
とりあえずいつも通り、紙と筆記具とバケツ、水彩絵の具一式を用意していく。
その途中で颯が来た。彼は元気よく室内に入ってきて、もう慣れた動作で机に荷物を置く。
颯と他愛ない話をしながら、快晴の外を見た。梅雨のこの時期、晴れているのは貴重だ。
私はロッカーからレジャーシートを取り出して、颯に言った。
「今日は外で描こうと思ってるけど、どうする?」
「……え、外行くの?」
「うん」
「俺、ついてっていい?」
「いいよ。窮屈だし、つまんないと思うけど」
私が持っているレジャーシートは、ギリギリ二人分座れる程度だ。
外だから机もないし、課題もできない。颯がやれることはいつもよりもっと少なくなるのに、彼は嬉しそうに「やった」と言った。