「………なんとかなるかな」

「おー、なるなる。絶対なる」


根拠もなく頷く颯を見て、思わず笑った。


本当かなぁ、と言って、小さく肩を震わせる。


空の茜色が辺りに広がり、私たちの後ろには真っ黒い影が伸びていた。






次の日の放課後、美術室へ行くと、誰もいなかった。


今日は、古田先輩は来ない日なのかな。


とりあえずいつも通り、紙と筆記具とバケツ、水彩絵の具一式を用意していく。


その途中で颯が来た。彼は元気よく室内に入ってきて、もう慣れた動作で机に荷物を置く。


颯と他愛ない話をしながら、快晴の外を見た。梅雨のこの時期、晴れているのは貴重だ。


私はロッカーからレジャーシートを取り出して、颯に言った。



「今日は外で描こうと思ってるけど、どうする?」

「……え、外行くの?」

「うん」

「俺、ついてっていい?」

「いいよ。窮屈だし、つまんないと思うけど」


私が持っているレジャーシートは、ギリギリ二人分座れる程度だ。


外だから机もないし、課題もできない。颯がやれることはいつもよりもっと少なくなるのに、彼は嬉しそうに「やった」と言った。