次の日、また廊下で何度か颯を見かけた。


彼は『いつも通り』、友達に囲まれて笑っていた。



「…………ねえ、眞子」



移動教室の途中、颯の後ろ姿を眺めながら、隣を歩く眞子に話しかけた。



「橋倉颯ってさ、誰かに対して怒ったり、意地悪したりしたこと、あるのかな」



私の目に映る颯は今日も、昨日も、その前も、ずっと笑っている。


私の突然の質問に、眞子は首を傾げた。


「どしたの、いきなり。なんか前も理央ちゃん、橋倉くんのこと聞いてきたよね。好きなの?」


好き?

どうだろう。

好きなのかな。私は、颯が。


こんなにも惹かれて、気になってしまうのは、好きだから?



「………わからない。ただなんか、気になるの。どうしても」



だけど、私の颯に対する感情は、友情とか恋情とか、一言では表しきれないと思う。