気まぐれで、颯が私にかまっているわけではないことは、私もわかっている。
だけど颯は気づいてない。自分が太陽であることにすら気づかず、無意識につくってしまった影で、泣いている私にも気づかない。
………こんなものだと思ったら、なんだか笑いがこぼれた。
「付き合ってるって、思われてるらしいよ」
出てきた声は、予想以上に冷たいものだった。
脈絡なく言われた言葉に、颯が「え?」と問い返す。私は短く「私たち」と言った。
「昨日、学校の人に見られてたんだって。一緒にいるとこ。それで、一部の人に私たちが付き合ってるって思われてるよ」
「…………」
「早く否定した方がいいよ、颯。嫌でしょう」
颯は、困った顔をするだけだ。そもそも、こんな話を聞いたのも初めてだろう。
何を言おうか迷っている。言葉を選ぼうとしている。
私が傷つかないように。肯定か否定か、どちらを言えば私が気分を悪くしないのか。
………そんな彼にも苛立ってしまう私は、本当に心が狭いと思う。
「……これ以上一緒にいると、もっと誤解されるかもね」
そう言った途端、彼は焦った顔をして、「理央」と言った。