颯は何か、秘密を抱えている。私はそれに巻き込まれたに過ぎない。
だけど、あんな思いをしたのに。怖くて怖くて、たまらなかったのに。
教えてくれないのか、それを。
一緒に考えることすら、させてくれないのか。
……当たり前か。たった一ヶ月しか、私は彼と過ごしていない。
私は彼にとって、秘密を共有できるような存在じゃないんだ。
友達の多い颯にとっては、私と過ごした一ヶ月なんて、些細なものだろう。
彼にはもっと、大切な人がいる。たくさん友達がいて、大事にしたいものがまだまだある。
私とは違う。
狭い世界で、数少ない大事なものを必死にかき集めて生きている私とは、違う。
ふと、昼休みに聞いた、女子たちの会話を思い出した。
『颯とつり合ってない。絶対颯が気まぐれでかまってあげてるだけだよ』
なんだか馬鹿みたいだ。
あんなのに泣いてしまった、私が馬鹿みたいだ。