「颯、優しいしね。ちょっと変わってるとこあるし」
「そこがいいんだけどね。あー、早く別れてくんないかな。てゆーか目障りだわ」
ぎゅ、と手のひらを握りしめた。さっと踵を返して、そのまま教室へも戻らずに階段をかけ下りる。
泣くもんか。
こんなの、どうということはない。地味だなんて、今までも嫌というほど言われてきた。
だけど私は、絵に全力を注ぐ私が好きだったし、誇らしく思っていたから。
………だから、気にしなかったのに。
「………………」
誰もいない裏庭前の渡り廊下で、ゆっくりと立ち止まった。
するとじわりと涙が出てきて、慌てて袖で拭う。だめだ、昨日から涙腺が弱くなってる。
私が悪いの?
颯がせっかく仲良くしてくれてるのに、地味な私が悪いって?
違うでしょう?
きっと颯は、私が地味でも派手でも、あの絵を描いた私なら、仲良くしてくれただろう。気まぐれなんかじゃない。
わかってる。颯のことを理解してないのは、あの子達の方だ。
わかってる。わかってる。
だけど………なんで私だけがあんな風に言われなきゃいけないんだって思ってしまうのは、仕方ないと思うんだ。