「………夢なら、早く覚めて」



ぽつりと、呟いた。


声は颯の耳にも届き、彼の表情を一層辛くさせた。


「いきなりいなくなるのだけは、やめて。消えないで………お別れは、ちゃんとさせて」

「……うん。約束する」


颯の手が、私の手に絡まる。


その指は細く白く、頼りなさげに見えたけれど、それでも彼は力強く、私の手を握った。



低い彼の体温が、私の熱を奪う。


……この人の笑顔はいつも暖かいのに、手のひらはいつも冷たいな、なんて、どうでもいいことをぼんやりと思った。