「ねえ、颯!原因がわかってるなら、教えてよ」

「……わかんないよ、俺には。消えたって実感もないのに」



颯は私の腕から手を離して、自分の手のひらを動かす。


眉を寄せて、彼はそれを見ていた。


「じゃあ、私の話が嘘だと思ってる?私の目が、おかしいと思う……?」

「……ううん。理央の話は信じるよ。第一、こんな嘘つく必要ないしね………俺は何度も理央の名前を呼んでたけど、届かなかったみたいだし」

「……………」


声も、消えていたのか。


突然泣き叫んで彼を呼び始めた私に、どうすることもできなかった颯も、きっと困っただろう。



「……そう、だったんだ」



もう、なにもわからない。


颯本人がわかっていないのだから、私にわかるはずもない。



「………………」



私たちの間に、沈黙が落ちる。


泣きつかれた私の頭は冷静さを取り戻しながら、どこかこれを現実と思えていない自分がいることに気づいた。


だって、普通あり得るだろうか。



人間の身体が、突然透明になるなんて。