「………うお。いきなりだな、理央」
その場に座り込んだ私が今から何をするのか気づいたのか、颯がこちらを向いて驚いた顔をした。
「ごめん、描きたくなった」
「いいけど……俺はなんかポーズとった方がいい?」
「ううん。なにもしないで、普通にしてて」
「わ、わかった」
自然体を描きたい。あくまで日常のワンシーンを描きたいんだ。
「えっ、理央、絵描くのか!?」
シャーペンを走らせ始めたところで、子供たちも気づき始めた。私は頷いて、「あなたたちも描いていい?」と尋ねた。
「オレたちも描いてくれんの!?」
「うん。いい?」
「やったー!理央、絵上手いもんな!前に友達が理央に描いてもらったって言ってて、いいなって思ってたんだ~」
この子が言っているのは、たぶん前に駄菓子屋を描いたときに登場してくれた子供たちのことだろう。
「ありがと。じゃあ遠慮なく描かせてもらうけど、こっちのことはあまり気にしないで、好きなようにしてて」
「はーい」
こういうときだけ素直だ。元気のいい小学生たちは、またゲームの話で颯と盛り上がり始めた。