「……意味わかんない」
「はは。ごめん、気にすんな」
颯は笑って、私の髪を撫で回した。また心臓が跳ねて、それが悔しくて、つっけんどんな態度で「ちょっと、やめて」と文句を言う。
だけど颯はしばらくの間、何故か嬉しそうに笑っていた。
………細められたその目がわずかに潤んでいたことには、気づかないふりをした。
*
それからしばらく坂道を歩いていると、やがて平坦な道に出た。
ぽつぽつと民家が建ち、その間をうっそうとした緑が埋めている。
通りにはこの辺りの子供たちが集まる小さな公園があり、木々の隙間からカラフルな遊具たちが見えた。
日曜日の午前、ちらほらと子供とすれ違う中、その店は空気に溶け込むようにゆったりと、そこに存在していた。
「ついた」
私が一言呟くと、隣で「おー、あれか!」と声がした。
古びた小さな木造の建物は、これはこれで趣があって私は好きだ。