「誕生日がくれば成長したわって喜ぶべきなんだけど、私は喜べないわ」

「...」

母親にもやはりいろいろ複雑な気持ちがあるのだろう

「成長してしまったら、この子がいなくなってしまいそうで...不安だわ。」

「俺も不安です。千夏とずっと一緒にいたい。」

叶わぬ夢だとわかっている

だけどそばにいたいと思うんだ

「きっと千夏も達也くんと一緒にいたいと思ってるわ。」

「だといいんですが。」

自意識過剰ではないけど、千夏が俺を思ってることくらい痛いほどわかってる

学校にいた時から気づいてた

俺も好きだった

だけど言えない臆病な自分がいたんだ

そんなこんなで、思いは通じあったけどもっと前から言ってればよかったのかもしれない

「達也くん。この子の傍にいてあげてね」

「もちろんです。」

「親ばかじゃないけど、この子はよく笑う優しい子なの。」

「知ってます。」

「人のために泣ける。だけど、自分の苦しみはみんなが苦しんじゃうからって自分の中に溜めちゃうような子なのよ。」

「はい」

いたいほど知ってる

長いようで短いけど、千夏を見てきたんだ

「この子の傍で笑っていて。それがこの子の一番の幸せよ。好きな人と笑っていられる時間は大切だから。」

「はい」

千夏を見つめながら言うお母さんはとても優しい瞳をしていた