ふと顔を上げると千夏のお母さんが微笑んでいた

その優しい笑顔があまりにも千夏にそっくりで余計泣きそうになった

「それとね、これも受け取って欲しいの」

そういって差し出されたのは小さなアルバムだった

「これは?」

「千夏が大切にしていたもよ」

1ページ目をめくると俺が撮った空の写真があった

「写真の裏を見てみて」

言われたとおり写真の裏を見ると一つの言葉が綴ってあった

この日は綺麗な青空で雲ひとつない日の写真

“とても澄んでいて綺麗だね”

青い空に真っ白な雲がところどころ見える写真

“暖かい空だね。達也みたいに暖かい”

今まで渡し続けてきた写真

いつから?いつからなんだよ...

最後のページには一つの指輪が小さな紙と一緒に入っていた

“沢山のありがとうをありがとう。”

“いつか、達也に大切な人ができた時のために指輪は返しておきます。”

“あの日の出来事は私にとって大切な思い出です。”

“指輪は返すけど達也ことは変わらず大好きで愛しています。”

“でも私はここにはいません。”

“新しい道を歩んでください。”

“私からの最後のお願いです。”

千夏はなんでこんなにも暖かいのだろうか

もう少しだけ...もう少しだけ千夏に執着させてくれよ

今日で最後にするから

明日からはちゃんと前を向くから

だから今日だけは千夏を思わせてくれ。