どれだけ抑えても抑えても、高木先輩の顔がちらついて、どうしようもなく会いたくなる。声が聞きたくなる。

一回、認めてしまえば、あとはもう諦めるしかなくて、電話を掛けることしか頭になかった。

電話、してみようか

画面に❝高木誠也”の文字を呼び出す―――だけで、指が固まったかのように動かない。

電話をする理由が思いつかない。
なんて言えばいいのか。何も話すこともないし……

まるで高校時代に戻ったよう。

いつもあの人の影を追い、あの人の言葉に一喜一憂した、あの頃のような気分。

真っ暗の画面になったり、また触って“高木誠也”の文字を睨んでみたり……そんなことを繰り返すだけ。

こんな情けない自分なんてもう卒業できたと思っていたのに。

画面が暗くなったと思って指先でふれたとき、突然画面が切り替わり「電話をかけています」という文字が現れた。

「は?」

一瞬意味が分からず固まったけど、次の瞬間“通話”のところを触っていたかもしれない事実に気付いた。

「あー!」

やってしまった。
ドキドキと胸がうるさい。

切らなきゃと思うけど、焦り過ぎてどこを触れば切れるのか忘れてしまった。
でも今切ったら、確実に着信履歴が残る。
それはもっと怪しいと思うから……

覚悟を決めた。