「奈々。じゃ、会いなよ」

真理子先生の声が優しい。

「でも、好きじゃないのに……会って何を話したらいいかも分からないのに……」
「でも、会いたいんでしょ?」
「はい……」
「私からしたら、それだけ一途に想い続けられるのが羨ましいけどね」
「好きじゃないですけど」
「はいはい。分かったから、食べな。ここのピザ、マジ美味しいよ。奈々が食べなかったら私が一人で食べちゃうよ」

その言葉で、ようやく目の前に食べ物が並んでいたことに気付いたくらい。

「真理子先生」
「何?」
「一人で食べたら、太りますよ」
「はぁ?心配してやってるのに、もう奈々は食べなくていい!」
「あはは…ください」
「ダメ」
「ごめんなさい。お願いします」
「じゃ、今日、その彼に電話すること。約束ね」
「今日ですか?」
「そうよ。思い立ったら即行動!私を見習って」
「真理子先生。この前のキャンプで出会った人とは続いてるんですか?」
「……今、聞く?それ……」

お店のドアが一瞬開き、2月の寒気が店内に流れ込んだ。