放課後また呼び出しをくらって指導室に行くと柴が座っていた



「.....」



柴と目が合ってすぐに帰ろうとしたら柴が慌てて



「まって!」



呼び止めるその声はまるで私の7年前言えなかった時の声のような気がした...


だからか、私は扉を開けて部屋を出ることはできなかった...



右足を軸に後ろを振り向き椅子に座った



「今日は寄る場所があるから急いでるので話の内容がいつもと同じでしたら帰ってはダメですか?」



ほかの先生に話すように話すと柴は眉をハの字にして



「あのね、君のお兄さん達にぶっ飛ばされたくは無いけど
俺は教師なんだ...
話を聞かせてほしい...」



私は困り、小さく口を開けながら声を出した...



「私は、両親も名前もありませんでした...
何も知らない世間知らずの私に、この世を生きていくために必要な事を教えてくれた人がいます。
何も出来ない私に手を貸してくれた人です。
何も持たない私に、いろんなものをくれた人なんです。


その人は、7年前に一つの約束をして海外に沢山の人を助けるために飛行機で飛んでいきました。
私を愛してくれる感情は、この世のどんなものよりも上だったのだと思います...

先生の妹さんは、確実に死んだと断定できますが、私の想い人は何も分からないまま...
私たちの繋がりは1枚の紙の上だけで...
それがとても悲しく、虚しい...


きっと、誰にもわからない感情なんです。
先生、先生面して他人のあれこれを聞き出そうとしないでほしい...
先生のように立ち直っている人ばかりではないのです」



そう言うと柴は



「今の話、君のお父さん??」



唐突に出た言葉に何も答えられずに、ただ、下を向いて黙ってしまった...



私は最低だ...



まだムラを父親と呼べずにいる...



何処からか何かしらの感じたことの無い感情が出てきて、頬に温かいものが落ちていく.....